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ファッションのWeb教科書 :ファッション専門学校で教えているアパレル・洋裁の基礎
元ファッション専門学校講師が実際に授業で教えていたことをブログにまとめました。 ファッション専門学校ってどんなことを習うんだろう? そんな疑問にお答えします。
お知らせ
本業多忙のためすっかり間が開いてしまいました。申し訳ございません。
再開は来年春頃を予定しております。
今しばらくお待ちくださいますようお願い申し上げます。
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はじめに
当ブログへお越しいただきましてありがとうございます。

現在がんばって執筆しております。

ファッションはかなり広い分野となり掲載内容が膨大になりますので気長にお待ち下さい。

ファッション専門学校で9年間講師を務め、その間に感じたこと、生徒のみんなに伝えたかったことなどを忘れないうちにまとめようと思いブログを立ち上げました。

ファッションに興味があって業界内で働いてみたいと思っている方、実際にファッションの勉強をされている方、独学で服作りをされている方、そういった人たちにファッションや洋裁の知識をお伝えできればと思います。

また近年教科書のデジタル化が推進されております。専門学校へ通うと生地や裁ちばさみ、課題などで重い鞄を担いで通学することになります。せめて教科書だけでも軽くしてあげたいと思い、微力ですがデジタル化の流れのお手伝いになればとも考えております。

とはいえファッションはかなり広い範囲を指します。そしてそれぞれ専門分野に分かれていて奥も深いです。そのためここではまずファッション専門学校の一年生が習う範囲を取り上げていきます。

一年生で習う内容は当然学校によって違います。そこで今日本でもっとも使用されているであろう教科書「改訂版・服飾造形講座〈1〉 服飾造形の基礎 (文化ファッション大系) 」の内容にそって勉強していきます。



ちなみに私は文化服装学院の出身でもないですし、現在何の利害関係もありません。第三者の視点から最もふさわしいと思い選ばせていただきました。ただし著作権に配慮しその教科書に書かれている文章や写真などは一切使用しておりません。あくまで取り上げる内容と順番を参考にしただけです。そのため文章をすべて書き起こす必要がありますので時間的な都合上、伝えたい内容が掲載されている他サイト様やウィキペディアなどがあればそちらへのリンクを積極的に利用していきます。

そこで注意していただきたいのが情報の信憑性です。社会に出てからもネットでの検索は頻繁に利用します。その莫大な情報の中から自分が必要としていて且つ正しい情報を探すスキルも重要となってきます。一つの情報を鵜呑みにするのでは無く、いろいろな情報を集めて自分で正しい情報を選択できるようになって下さい。
(このサイトも数ある情報の中のひとつです。)

勉強する順番は左のメニューの上から順番となります。

では授業の始まりです。がんばってついてきて下さいね。

[閑話休題]デザイナーを目指した若者の話
デザイナーを志したある若者の話です。

人々のコミュニケーションツールがポケベルから携帯電話へと移り変わる頃、ファッション界ではインディーズブランドブームなるものが起こっていました。
原宿の路地を入ったところにある通称「裏原」ではショップNOWHEREでアンダーカバーとベイシングエイプが一大ブームを起こし商品にはどれもプレミアが付くほどでした。
トライベンティ(後の20471120)やビューティビーストは全国の百貨店を席巻し、街を歩けば誰かがどこかのブランドの服を着ている状態でした。
そして次に流行りそうなブランドを探してバイヤーたちは全国を駆け巡り、それに答えるように行政も補助金を出し、新しいインディーズブランドのために展示会やファッションショーを行なっていました。

若者誰しもが持つ根拠のない自信だけはあった若者は企業に入るか、独立してブランドを立ち上げるかどうか悩んでいました。
「企業に入って独立するためのノウハウを身につけたほうがいいのかなぁ。」
「でも、それだと独立した時に何歳になるんだろう?」
などと考えていたある日、偶然学校の先輩が独立してやっているブランドのショップを見つけました。
「ちょっとお話を聞いてみよう。」
なんの土産も持たずいきなり押しかけたにもかかわらず先輩は親切に仕事の内容を教えてくれました。
委託と買取の違い、掛け率のこと、営業の仕方等々…
そして最後に「きみにもできるよ。」という言葉をかけて下さったのです。
何を根拠にその言葉が出てきたのかはわかりません。ただ若者は何ら疑うことなくその言葉を信じ進む方向を決めたのでした。

先輩の紹介でいともたやすく行政の主催する合同展示会への出店が決まりました。
開催日は学校を卒業してすぐの4月頭です。学校の卒展作品と並行して展示会用の服を作っていきます。
やることは服作りだけではありません。ブランドネームを決め、下げ札、織りネーム、洗濯絵表示などを発注し、名刺を作り、展示用具を揃え、バイヤーの方向けの資料も作らなければいけません。
結局作業は展示会の朝まで続きました。そして赤くなった目をこすりながらそのまま展示会場へ服を運んだのでした。
展示会の行われるビルに着くとすでに先に到着した先輩デザイナーたちが手際よく搬入を行なっているところでした。若者はあらゆることが初めてで右も左もわからないままとにかく服を抱え展示会場へ服を運びます。まわりは台車を使いたくさんの服をダンボールに入れて一気に運んでいます。若者は手に持てるだけの量を持ってひたすら何回もエレベーターを上ったり降りたりしています。
一つのブランドに与えられたスペースは3mx3mほどで真ん中に商談用の丸テーブルが一つと椅子が用意されています。お金を出せば更にスペースを広げていくことも可能で、資金力のあるブランドは広いスペースにたくさんの商品を展示しています。
いくら行政の補助があるとはいえそんなお金のない若者は一番小さなスペースです。それでもハンガーラックに商品をかけていくとハンガーとハンガーの間にはかなりの距離がありました。
手慣れた先輩デザイナーたちはモニターを持ち込んで自社の商品のPRビデオを流しています。販売員を連れてきて自社の服を着せ接客させているところもたくさんありました。
普段であれば自分があきらかに場違いな存在だと気づいたことでしょう。しかし徹夜の睡魔と疲れで意識が朦朧としそんなことを考える暇もありませんでした。

そしていよいよ開場です。
人が一気になだれ込みます。業界の人間だとひと目でわかるような出で立ちの人ばかりです。
そして来客者は胸にバイヤーやプレス、テキスタイル関係、その他など従事している仕事内容を示すバッジを付けています。当然自分のブースに一番来て欲しい人はバイヤーになります。他のブランドはすでに取引のあるバイヤーと商談に入っています。というのも予め各ブランドは自社の顧客に展示会のダイレクトメールを送っていたのでした。
つい一ヶ月前まで学生だった若者に顧客などいるはずもなく、当然訪れてくれる人もいません。
暇を持て余してはやさしそうな顔をしたデザイナーさんのブースへ行って厚かましくもいろんなお話を伺うのでした。
そうこうしているうちにプレスの方が訪れ取材をしてくださいました。若者は服についての思いや方向性などを偉そうに語るのでした。最後に何点か写真を撮っていただきまた暇つぶしが始まります。

他のデザイナーさんのブースでしゃべっているときでした。
「ほら、君のブースにお客さんが来ているよ。」といわれ振り返ると3名のお客様が来ていました。
そして胸にはバイヤーの文字が。
すぐにかけつけマップを渡して席に着くように促します。着席していただけたらお茶を用意し生まれて初めての商談開始です。
とにかく服の説明をがんばります。コンセプトがどうで、ターゲットがこうで、と。学校では商談の仕方は教えてくれません。ただ勢いだけはありました。

お昼を過ぎると友人たちも花束を持って駆けつけてくれました。中には服を購入してくれた人もいました。つかの間の休息です。仲間はありがたいものです。

徐々に来客者も増え、頂いた名刺も増えていきました。
そしてついにその時が訪れました。
一度商談をした某大手百貨店のバイヤーさんが再度訪れこう切りだしたのでした。
「今度インディーズ向けの売り場を設けるので、そこに出店して見ませんか?」

つ、ついに
キタ━━━ヽ(ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ∀゚)ノ゚)ノ)ノ━━━!!!!

今風に書くとこんなかんじでした。
インディーズ向けのインキュベーター事業の一貫なので、条件は買取、発注量も自分だけでは縫うことができないくらいでした。
トントン拍子で話は進み、資金繰りが苦しいだろうという配慮から、手付金も早くに振り込まれました。
客観的に見るとかなりの幸運が舞い降りたと言えます。
しかし若者は服を作りながら考えるのでした。
「これだけの受注を貰っても取引先が一社だけじゃ全然食べていけないなぁ。」

ショップで販売されている値引き前の服の価格を定価とも言いますが、商品をショップに卸す場合、アパレルメーカーとショップの力関係にもよりますが、定価の50~70%の価格で商品を卸します。
ですから1万円のパンツを60%の掛け率で下ろした場合、アパレルメーカーの売上は6000円となります。
もちろん服を作るのには生地代も要りますし、ネーム、タグ、縫製工賃などの費用もかかってきます。
生地、付属代などが1000円で縫製工賃が2000円だとすると、アパレルメーカーの儲けは
売上6000円-生地付属代1000円-縫製工賃2000円=3000円
となり、最後の3000円が儲けとなります。このお金が自分の収入となるわけです。

では逆に月々の生活費に18万円かかるとしたら上記の条件だと毎月どれだけの服を売ればいいのでしょうか。
答えは定価で月々60万円です。
年間で計算すると720万となり、春夏と秋冬で展示会を行った場合、展示会ごとに360万の受注を取る必要があります。
ですがこれはあくまで理想の値です。作った商品が定価できれいに売り切れた場合の数値なのです。実際には売れ残りの在庫や生地のロスなどがあり更に多くの受注を取らなければいけません。
また卸の方法には買取と委託があり、買取はその名の通り商品をショップに届ければすぐに支払いがあるのですが、委託はショップで売れてから商品代金をいただけるシステムなので、言い換えれば売れなければいつまでたってもお金が入ってこない状態になります。

資金繰りのことを会計用語でキャッシュ・フローといいます。直訳するとお金の流れのことです。
委託の場合お金を払って作った商品がショップに売れ残っている状態というのは、自分のお金をショップに預けたまま自由にできないだけではなく、売れないとお金が帰ってこない状態です。
自分の大切な資金が塩漬け状態になるわけです。そのため委託ばかり続けているとキャッシュ・フローが行き詰まり次のシーズンのために生地を買うことすらできなくなるのです。
シーズン終盤にセールなどで売れればまだいくらか返ってきますが、売れ残って返品された場合、不良在庫となってしまい生地代と縫製工賃に使ったお金は返って来ません。それほどリスクのある取引なのです。
では委託ではなく買取で卸せばいいではないかと思うでしょうが、資本力も知名度も無いインディーズブランドの場合、よほど売れているブランドで無い限りショップが買取を渋ります。買取の場合売れ残ればショップの損失になるからです。一方委託の場合売れ残ってもメーカーに返品すればいいだけなのでショップ側は金銭的に痛くも痒くもなく、委託なら置いてもいいよというところが多くなります。
卸先の少ないインディーズブランドはついついその言葉に引き寄せられて破滅の道を進むことになるのです。

若者のブランドは大手百貨店に卸してはいるものの徐々に資金繰りに行き詰まっていきました。
資金繰りが悪化した原因の一つは、手を広げすぎたことでした。
大手ブランドと同じようにコート、シャツ、パンツ、グッズとフルアイテムを展開し、必要な生地の種類が多くなりまたその生地のロスも大きく、仕事が多岐にわたることで一つのアイテムにかけられる作業時間も少なくなってしまい、結果デザインの練り込みも足りなくなり売れ行きが落ちたのです。
もともとブランド設立時に資金が潤沢にあったわけではありません。これ以上続けるにはいよいよ借り入れも検討しなければいけない状態です。

「お金」がなくなってくると次になくなるのは「やる気」です。
いまこそ奮起し、新たな取引先を開拓するべきなのですが、服を作るのは徹夜しても平気な若者も営業だけは苦手でした。
飛び込みでショップに持ち込みをして契約まで持ち込むことが難しいこととは頭ではわかっているのですが、いざ断られてしまうと自分のことを否定されたかのように感じてしまい、次の一歩を踏み出せず立ち止まってしまうのです。

そしてやる気と同じくして最大の卸先である百貨店での売上も落ちていったのです。
そんなある日、某大手百貨店のバイヤーさんから電話があり、神妙な様子で直接会って話したいことがあるというのでした。
容赦のない夏の日差しが照りつける中、ファミリーレストランで待ち合わせ他愛のない世間話をしていると突然その言葉は告げられたのでした。
「もう今期で終わりにしない?」
それを聞いた若者は本当はそう言われることを予想していたのに、やる気がなくなってきていることを見透かされたくなかったのですぐに驚いたふりをしました。
でも内心ではその言葉を期待して待っていたのでした。
この先に待ち受けていることは、世間知らずだった若者も少しだけ社会を経験し、ちょっぴりはわかりました。
それが怖くて逃げたのかもしれません。
ブランドは休止することにしました。完全にやめてしまうのではなく、休止としたのはまだ未練があるからです。

いつか自分にもう少し力がついたら・・・。

お話はこれでおしまいです。
文才が無いためダラダラと長い文章を失礼しました。
みなさんお察しの通り若者とは私自身のことです。広いキャンバスに自由になんでも描いていいよと言われて結果的に敗北と挫折を味わうことになりました。自分に実力がなかっただけで他の人がそうなるとは限りません。
今思えばアイテムや型番を絞り資源を集中させていればもう少しはましだったのかもしれません。結果論にすぎませんが。
その後の若者は何をするにも慎重になり、ちょっぴりだけずる賢くなりました。力がついたかはわかりませんが、トレーニングはしてるつもりです。

「本当に自由を許されてみると、自由ほどもてあつかひにヤッカイなものはなくなる。芸術は自由の花園であるが、本当にこの自由を享受し存分に腕をふるひ得る者は稀な天才ばかり、秀才だの半分天才などといふものはもう無限の自由の怖しさに堪へかねて一定の標準のやうなもので束縛される安逸を欲するやうになるのである。」坂口安吾



[初級編] 4.デザイン(アイデア)の考え方
テレビに映るデザイナーの仕事と言えば、たいていデザイン画を描いている姿が定番です。
インタビューされているデザイナーの後ろの壁にはずらっとデザイン画が並び、白紙の紙にすらすらっと一気にデザイン画を描き上げていく姿が映し出されます。
端から見ている人には少し頭をひねっただけでどんどんアイデアが湧いてくるようにも見えるでしょう。
ですがインプットなしで延々とアウトプットできる人はごくわずかです。
多くの人は様々な情報を集めて、アイデアがひらめいたらノートなどにまとめておき、仕事でデザイン画を描くときに参考にします。

ひらめきまでに到達する順序がわかりやすく書かれている本があります。アイデアを出すことが必要な人には、昔から愛読されているアイデアの古典とも言える本です。
そこに書かれている順序は、

①資料収集
②資料を自分なりに解釈し、自分のものとする
③すべて忘れてしまう。(忘れたふりをする。)
④ふとした瞬間、アイデアのかけらがでてくる
⑤アイデアをデザインまで高める

の順序でひらめきが生まれてくると書かれています。



情報収集(リサーチ)はアイデアのための第一段階です。ですがじつは若い皆さんでしたら日常的に行なっていることがすでにアパレル会社に入ってからするリサーチと同じ事をしている場合があります。
それもそのはずファッションの専門学校へ進学を希望する方々は常に流行を意識し、また実際に流行の先端を行くアイテムに身を包んでいます。
流行の移り変わりはかなり激しくうっかりしているとすぐに取り残されてしまいます。
そのためにも雑誌やテレビなどの媒体から情報をインプットし続ける必要があり、最先端の物を実際に消費する行為がすでにデザインの前段階となっているのです。

資料を集めるだけではなく、②の「資料を自分なりに解釈し、自分のものとする。」をすることも重要です。
資料となる本を買って本棚に並べているだけで、情報収集した気になってしまいがちです。
ただパラパラとめくって見ただけでは情報はほとんど頭には入っていません。見たことを自分なりの形にして別の紙に書き写したり、発想をふくらませるなどして自分の頭の引き出しにきちんと整理して、必要なときにすぐに出してこられるようにすることが肝心です。

しかし次にすることは解釈したものを一反忘れてしまうことです。とはいっても完全に記憶から消すわけではありません。そのままだと入れたての情報が頭にこびりついてしまい、アイデアを考えた時に思いつくのはその事ばかりで発想が単純になってしまうからです。

アイデアは出したい時にすぐに出てくれるものではないのです。それはふとした瞬間、電車に乗っている時や、寝る前、ぼ~っとテレビを見ているときなど急にひらめいたりするのです。
ですが一瞬頭をよぎる程度ですので、すぐに忘れてしまいます。常に的を絞って何かのアイデアがひらめくのを待ち構えていないとひらめいたことすら気づかないかもしれません。
デザイナーにメモ魔が多いのはそのためです。ひらめいたことを忘れないうちにあとでわかるように残すのです。
ですからデザイナーの仕事は仕事場でデザイン画を描くだけではなく、起きている時間全てを使いリサーチをしながらひらめきが出てくるのを待つことも大事な仕事なのです。

よく有名な芸能人がブランドを立ち上げたりしています。おそらくその人自身に服作りの知識はあまりないと思います。ですが脇をサポートする優秀な人材が揃っていれば、売れるものを作ることが可能です。芸能人の方にも流行を捉えられる感性が少しでもあれば、あとは脇を固める人材が芸能人の思いつきのアイデアからしっかりと服作りをし、芸能人を広告塔代わりにPRをし、その知名度で商品を販売するのです。
こんなことを書くと素人でもデザイナーができるのかと思われるかもしれません。先ほどのお話はあくまで「売れるもの」を作れるかどうかという話です。それはどちらかと言えば一過性のブームとも言えるものです。ブームが去ってしまえば、その商品を買った人は易易とブームに乗せられてしまった自分を少し悔やむかもしれません。
ファッションの意味するところが「流れ」だとするとそのようなブームもファッションに含まれるのでしょう。ですが私個人としては芸能人の知名度といった服以外の価値に頼った服作りをみなさんにして欲しくはありません。服そのものが持つ価値を高めるデザインをして欲しいのです。

デザイナーは自分の好きなようにデザイン画を描いているように思われがちですが、実際はかなりの制約の中でデザインワークを行っています。予算の制約、納期の制約、市場動向、シーズンごとのテーマ、などなど。それらの条件をクリアしかつ新鮮みがあり、人々の心を動かすことのできるデザインを考えていくわけです。
デザイナー個人に自由にデザインが許される範疇は会社によって全く異なります。中にはシーズン毎の変化が乏しく前シーズンのデザインを少しいじる程度で新たなデザインを挟み込む余地など無い場合もあります。
デザイナーを志望されるみなさんは当然のことながら一から全て自分で思い通りにデザインをしたいはずです。ですが現実的にそれが許されるケースはごく稀で、それをすぐにしたい場合は独立して自分でブランドを立ち上げ会社代表とデザイナーを兼任していく方法しか残されていません。しかしこの方法にはかなりの困難が待ち構えています。

次回は自由に描ける広大なキャンバスを与えられた若者のお話をしたいと思います。



[初級編] 3-2.既製服(レディメイド、大量生産)
既製服の製作の場合大きなアパレルメーカーではそれぞれの作業は完全に分業化されています。一つの技術を専門的に高めていくほうが生産性が高いからです。
一方小さな規模のアパレルメーカーではデザイナーとパタンナーが兼任していたり、デザイナー自身がサンプルの縫製に当たることもあります。ですので将来的に独立を視野に入れている方や、広い知識を学びたい方はあえて規模の少し小さい企業に入社すれば、大企業では経験のできないいろいろな作業を体験することができるでしょう。
では一般的なアパレルメーカーでどのように洋服が製作されているかを見ていきましょう。

①資料収集
なにか新しいものを生み出すには今現在頭の中にある知識だけではなかなか優れたものを生み出すことはできません。またあくまで商品である以上お客様のニーズに応じたものを製作し会社の売上に貢献することが重要となりますので、常に今流行っているもの次に流行りそうなものを知っておく必要があります。
そこで自社のブランドがターゲットとしているお客様がどのようなものに興味がありどういった生活をしているかなども含めてリサーチしなければなりません。実際に街に出て道行く人達を眺めながら使えそうなアイデアがないかと注意深く観察したり、流行っている物や場所を調べていきます。

②商品企画
情報集して得た内容をまとめ、今シーズンのテーマや方向性などを踏まえてデザインを起こしていきます。今まで築いてきたブランドのイメージを損なうことなく最新の流行に沿った味付けを施していきます。そして素材決定、細かな仕様の設定などをし、販売価格を決めていきます。

③サンプル製作
起こしたデザインでサンプルを製作していきます。パターンメイキングやドレーピングで型紙を製作し、縫製をします。制作の過程で本生産の際に問題になりそうな箇所があった場合は仕様を変更しながら製作をします。
サンプルの製作は自社でサンプル室を設けているところもありますし、一点だけ縫製工場で縫ってもらうところもあります。

④展示会、生産販売会議
上がってきたサンプルを見て実際にその商品が売れるかどうか、そして色展開、サイズ展開はどうするか、販売価格は妥当かどうかを営業担当の方を含めて検討していきます。
また自社の直営店だけでの販売ではなく、小売店に商品を卸して販売する場合は、展示会を行います。展示会ではハンガーやラックにサンプルをずらっと並べ、小売店のバイヤーさんと商談を行います。そこでの受注状況などから生産枚数や納期を決定します。

⑤工業用パターン作成
サンプルの時に使った型紙は一着だけ製作するための型紙でしたが、数がまとまって大量に製作をする場合は型紙を量産向けの工業用パターンに修正していきます。サンプルの時は半身分の型紙でも製作ができましたが、量産の場合は裁断機でまとめて裁断ができるように、両身頃全てのパーツが必要になります。また誰が見ても同じ商品ができあがるように共通の記号や表記を使います。

⑥グレーディング
グレーディングとは、サイズごとに型紙を修正していく作業のことです。サンプルをMサイズで製作した場合、LサイズはMサイズの各部分を少しずつ大きくしていき、Sサイズは逆に小さくしていきます。コンピューター(CAD)を使っている場合はグレーディングのソフトがありますので、そちらを使って必要な数値を入力しグレーディングを行います。CADが無い場合はパタンナーが手で引きなおしてサイズ展開を行います。

⑦マーキング(型入れ)
マーキングとは、生地の上にパターンを全て並べてどのように配置をすれば少ない生地で製作ができるかを試行錯誤する作業です。わずか数cの生地分量の違いでも枚数が数千枚などとなりますと生地のコストが大きく変わってきます。商品を販売して売れるかどうかはやってみないとわからないことですが、マーキングで要尺を詰めることができれば確実に儲けにつながりますので重要な作業になります。
こちらもコンピューターのソフトで行うことが可能です。

⑧延反
マーキングで求めた一着あたりに必要な生地の分量ごとに生地を重ねていきます。これは後で裁断機やバンドナイフなどで裁断をするためです。機械によっては手で動かして重ねていく場合もありますし、機械が全てを自動でやってくれるものもあります。

自動延反機



⑨裁断
少ない枚数でしたらはさみで切っていく事もできるのですが、枚数が多い場合は機械を使ってまとめて裁断を行います。延反機で重ねた生地の上に型紙をおいて裁断機などで一気に裁断していきます。また完全にコンピューターで自動化された自動裁断機などもあります。

自動裁断機


裁断機


バンドナイフ


⑩生地、副資材の準備と縫製仕様書の作成
本生産に必要な生地、芯地、裏地などをテキスタイルメーカーに発注し、ファスナーやボタンなどの副資材を副資材メーカーに発注します。
縫製仕様書とは服を制作するのに必要な情報が全て書き込まれた書類のことです。ハンガーイラスト、サイズごとの生産枚数や、使用生地、副資材、芯地の情報、縫製上わかりづらい仕様の補足説明、使用糸、運針数などを明記します。

縫製仕様書(google画像検索へリンク)

⑪縫製
生地、副資材を全て揃え縫製仕様書を添えたものを縫製工場へ投入します。縫製工場では生産時間を短縮することが売上へ繋がりますので、品質を落とさずに時間を短縮できるよう作業工程を決めていきます。
製作時間短縮のため衿なら衿だけ、袖なら袖だけと担当する作業を分担して流れ作業で作業を行います。またどの順序で組み上げていくかやどのタイミングでアイロンがけをするかなどもよく考える必要があります。

⑫仕上げプレス
縫製の最後はアイロンがけです。スラックスなどは自動プレス機で折り目をつけます。

⑬検品
針などの混入がないかを検針器で調べ、その他縫製上の不備がないかを確認します。

⑭梱包、下げ札付け
規定の大きさにまとまるようにたたんでいきます。またサイズや価格、ブランド名が表記された下げ札を取り付けます。

これでようやく完成です。このあとは受注のあった小売店に商品を送り店頭に陳列されてお客様にお買い求めいただくのを待つことになります。
流行の変化にいち早く対応するためには上記の工程をどれだけ短い期間で行うことができるかも重要になります。短い期間で行うことができるメーカーは流行が確実に到来するのをギリギリまで見極めることができます。またヒットしている商品をシーズン中に投入することもできますのでアパレル生産にはスピードも求められてきます。



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